手術以外の治療法2(MEA/FUS)
2018年10月公開
2021年11月更新
過多月経の症状改善に対する治療法として、マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)、子宮を温存できる手術以外の治療法として、集束超音波療法(FUS)があります。
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)※
MEAとは
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)は、過多月経の症状改善を目的とした治療法です。アプリケーターという細い器具を子宮の中に入れて、マイクロ波を照射することで、子宮内膜全体を熱で加熱、壊死させることにより月経の出血量の軽減を図ります。
2012年にMEAが保険適用となり、子宮筋腫や子宮腺筋症による過多月経の治療に用いられるようになりました。
※MEA:microwave endometrial ablationの略
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対象となる患者さん
- 子宮筋腫による、過多月経がある方で、
手術を希望しない方、あるいは外科手術のリスクが高い方 - 妊娠・出産を希望しない方
- 子宮筋腫による、過多月経がある方で、
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対象とならない患者さん
- 骨盤領域あるいは子宮に悪性腫瘍がある可能性がある方
- 子宮筋層の厚さが10ミリ未満の部分がある方
- 子宮筋腫のために子宮腔が変形し、すべての子宮内膜にマイクロ波アプリケーターが容易に到達できない場合
※将来妊娠を希望される方へMEA後は、ほぼ妊娠できなくなります。将来妊娠を希望される場合にはMEAの対象になりません。
治療方法
十分な麻酔を行い、アプリケーターを子宮の中に挿入し、子宮内膜全体にマイクロ波を照射します。通常の子宮腔の場合は、子宮内膜をすべて照射するためにかかる時間は6分程度です。治療時間は照射する子宮内膜の大きさや変形により変わりますが、おおよそ数十分です。
麻酔は、症例により治療時間は変わるため、それに応じて持続静脈麻酔、腰椎麻酔、硬膜外麻酔、全身麻酔と使い分けます。
施設によっては、日帰り手術をしているところがあるように、翌日から通常の生活を送ることが可能です。
治療による副作用、合併症には次のようなものがあります。
- 下腹部の鈍痛。通常は非ステロイド性抗炎症薬で抑えられる程度の痛みで、ほとんどの場合、翌日には痛みはほぼなくなります。
- 水様のおりものが増量することがありますが、術後4週間程度でなくなります。
- 子宮内に血液が溜まる子宮留血症が発生することがあります。
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メリット
- おなかに傷ができない
- 治療時間が短い(10~数十分)
- 入院期間が短い(日帰り手術ができる医療機関もある)
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デメリット
- 将来、妊娠を希望する場合は適応できない
- 過多月経が再発することがある
- 実施施設が限られる
集束超音波療法(FUS)※
FUSとは
集束超音波療法(FUS)は、高周波の超音波を筋腫に集中的に照射し、そのとき生じる熱エネルギーで子宮筋腫の細胞を加熱し壊死させ、筋腫の縮小と症状の改善を目指した治療法です。
日本では、保険適用外のため(2020年現在)、全額自費にて治療が行われています。

FUSでは、治療の際皮膚の切開は不要で、ほぼ日帰りで治療できます。また、合併症も少ないのが利点です。
一方で、治療を行っている医療機関は少なく、また、適応条件を満たす患者さんも非常に限られ、保険適用ではないため、治療費が高額になることが難点です。
※FUS:focused ultrasound surgeryの略
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対象となる患者さん
- 子宮筋腫による、過多月経、圧迫感などの症状のある方で、
手術を希望しない方、あるいは外科手術のリスクが高い方 - 筋腫の大きさは3センチ以上10センチ未満、筋腫の数は3個まで
- 子宮筋腫による、過多月経、圧迫感などの症状のある方で、
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対象とならない患者さん
- 骨盤領域あるいは子宮に悪性腫瘍がある可能性がある方
- 骨盤領域に感染症のある方
- 妊婦・妊娠の可能性のある方
- ペースメーカーなど体内に金属性の医療機器を埋め込んでいるなど、MRI検査ができない方
※将来妊娠を希望される方へFUS後の妊娠の可能性や安全性についてまだ明らかになっていないため、将来妊娠を希望される場合にはFUSの対象になりません。
そのほか、下記の場合は、担当医と相談してください。
- 有茎性筋腫
- 下腹部に切開創などの傷跡がある場合
- 仙骨に近い筋腫。筋腫から仙骨までの距離が4㎝以下の場合
- 筋腫と腹壁の間に腸管がある場合
- 変性の強い筋腫
治療方法
MRI装置の中で、うつぶせの姿勢になります。
おなかの下から超音波を、子宮筋腫にピンポイントに照射します。そのとき、MRIで画像を確認しながら少しずつ慎重に治療を進めます。
治療時間はおよそ3~4時間です。体を動かすと照射部位がずれるので、治療中は同じ姿勢を保つことが求められます。
FUSの治療は、日帰りか入院する場合でも1泊2日程度です。
ほとんどの場合、翌日から通常の生活を送ることが可能です。
治療後、筋腫は非常にゆっくり縮小するといわれています。
治療の効果が得られない場合や、再発した場合には、追加治療が必要になることがあります。
FUSは体への負担の少ない治療法ですが、ときに合併症が起こることがあります。
- 月経痛のような痛みを感じることがあります。
- 治療中(3~4時間)同じ姿勢をとるため、体の節々に痛みを感じることがあります。
- 仙骨前面に近い筋腫を照射する際には、足の痛みや刺激を感じることがあります。
治療後数日で痛みはなくなりますが、まれに仙骨神経の損傷がみられることがあります。 - 治療後、皮膚に熱を感じたり、皮膚が赤くなったりすることがありますが、1週間程度でほとんど改善されます。
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メリット
- おなかに傷ができない
- 日帰りで治療できる(治療時間3~4時間)
- 重篤な合併症が少ない
- 社会復帰が早い
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デメリット
- 将来、妊娠を希望する場合には適用できない
- 適用できる筋腫が限定される(筋腫の位置、大きさ、個数など)
- 再発する可能性がある
- 保険適用外のため、自費診療となる
- 実施可能な施設が非常に少ない
- 症状改善に時間がかかる
※このコンテンツは産婦人科の先生にアドバイスをいただき作成しています。