薬物療法
2018年10月公開
2021年11月更新
子宮筋腫に対する薬物療法のうち、ここでは一時的に筋腫の大きさを縮小させる方法を紹介します。おもにホルモン療法が行われます。
治療の目的には、手術前に筋腫の大きさを縮小することで、手術の難易度を軽減することがあります。また、閉経間近の患者さんに対しては、筋腫の縮小と症状の緩和を図りながら、閉経まで持ちこむ「逃げ込み療法」としてもホルモン療法は行われます。
ホルモン療法
女性ホルモンの分泌を抑えて、子宮筋腫を縮小
子宮筋腫は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)によって成長しています。「ホルモン療法」は、GnRHアナログ製剤(GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト)を投与して、女性ホルモンのうち主にエストロゲンの分泌を抑え、子宮筋腫を小さくする治療法です。GnRHアナログ製剤を投与することにより、エストロゲンの分泌が減り、閉経と似た状態になるため、月経が止まり貧血症状も改善します。
通常、治療を始めると2-4ヵ月で筋腫は半分ぐらいの大きさになりますが、子宮筋腫が消えることはありません。また、この治療で効果の得られない人もいます。
GnRHアナログ製剤による治療では、閉経と似た状態になるため、急激な更年期症状などの副作用があります。また、長期にわたる使用では、骨粗しょう症が生じる可能性があるため、連続して投与できる期間は原則6ヵ月間とされています。GnRHアナログ製剤の使用を中止すると筋腫は3ヵ月程度で元の大きさへと戻ります。
GnRHアナログ製剤には、GnRHアゴニスト(GnRH受容体作動薬)とGnRHアンタゴニスト(GnRH受容体拮抗薬)という2種類がありますが、どちらも女性ホルモンのエストロゲンの分泌を抑える作用があります。
治療の目的
GnRHアナログ製剤によるホルモン療法は、次のような場合に有効です。
子宮筋腫を縮小させて、手術難易度の軽減
子宮筋腫の手術前に、GnRHアナログ製剤を投与することで、筋腫への血流を減らしたり、筋腫を縮小させたりして、手術をやりやすくします。大きい筋腫は手術中の出血も多い傾向があるため、縮小させることで出血のリスクを減らします。貧血症状のあった方は、月経が止まることで症状が改善し、より良い状態で手術が行えます。
逃げ込み療法
閉経が近い年齢の場合に、GnRHアナログ製剤を使用して子宮筋腫を縮小させながら症状を改善させ、そのまま自然閉経に持ち込む、「逃げ込み療法」という方法もあります。ただ、いつ閉経になるかは予測できないため、6ヵ月間使用のあと閉経にならない場合、別の治療法の検討が必要です。
治療の方法
投与方法
GnRHアゴニストには、点鼻薬と皮下注射剤があります。点鼻薬は自分で1日2-3回鼻にスプレーします。皮下注射剤は病院にて4週間に1回皮下に注射します。GnRHアンタゴニストは、経口剤で毎日服用します。
薬は数種類ありますので、医師と相談してどの薬にするか決めます。
副作用
投与開始から2週間ぐらいで月経のような出血が起こることがあります。
副作用として、発汗、ほてり、のぼせ、肩こり、頭痛、不眠、イライラする、気分が落ち込むなどの更年期のような症状が起こることがあります。
また、長期に使用することで骨粗しょう症のリスクが高まると考えられています。
※このコンテンツは産婦人科の先生にアドバイスをいただき作成しています。