手術以外の治療法1(UAE)
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手術以外の治療法1(UAE)


2018年10月公開
2024年1月更新

子宮動脈塞栓術(UAE)

UAEとは

子宮動脈塞栓術(UAE)は、子宮筋腫に栄養を与えている子宮動脈の血流を止めることによって筋腫を壊死させ、筋腫の縮小と症状の改善を目指す治療法です。

UAEは、近年まで自費診療で行われていましたが、2014年にこの治療に使用される塞栓物質が保険適用となり、一定の条件を満たす施設で保険診療が可能となりました。

※UAE:Uterine Artery Embolizationの略

  • 対象となる患者さん

    • 子宮筋腫による、過多月経、圧迫感などの症状のある方で、
      手術を希望しない方、あるいは外科手術のリスクが高い方
  • 対象とならない患者さん

    • 骨盤領域あるいは子宮に悪性腫瘍がある可能性がある方
    • 骨盤領域に感染症のある方
    • 妊婦・妊娠の可能性のある方※
    • 造影剤によるアレルギーのある方
    ※将来妊娠を希望される方へ

    UAE後に妊娠ができるかどうかは明らかではありません。また、UAE後に妊娠をした場合、流産や帝王切開分娩、分娩後出血のリスクが高まるため、将来妊娠を希望される場合にはUAEの対象にはなりません。

    UAEは、手術とは異なり組織検査が行えないので、術前のMRI検査などで、できるだけ子宮肉腫などの悪性腫瘍との鑑別をしておくことが大切です。

治療方法

UAEの治療は、インターベンショナルラジオロジー(IVR)という血管内治療を専門としている医師が担当します。レントゲン(X線)の透視下で画像を確認しながら治療します。

足の付け根に局所麻酔を行います。
足の付け根の動脈にカテーテルを入れ、子宮動脈まで進めます。カテーテルから塞栓物質を注入して、子宮動脈を塞ぎ、血流を止めます。塞栓が完了したらカテーテルを抜き取り、止血のために傷口を押さえます。
治療時間は、1~2時間です。

治療終了後、カテーテルを入れた部分の出血が完全に止まるまで、数時間はベッドでの安静が必要ですが、その後は起きて歩くことができます。
入院期間は短く、退院後は、1週間ほどで社会復帰が可能です。
手術に比べて入院期間、その後の療養期間ともに短いことが多いです。

治療後、筋腫は徐々に縮小し、元の体積の半分程度の大きさになり、子宮筋腫に由来する過多月経、貧血、圧迫感などの症状が改善するという報告があります。

ただし、なかには治療の効果が得られなかったり、時間の経過と共に症状が再発したり、再度治療が必要となることがあります。

UAEは体への負担が少ない治療法ですが、ときに副作用や合併症が起こることがあります。次のような異常を感じた場合は、すみやかに治療を受けた医療機関へ連絡してください。

  • 治療後は、子宮筋腫への血流が途絶えるため、1、2日ほど生理痛を強くしたような下腹部痛が起こり、ときに、吐き気や発熱などがみられることもあります。その後も、1週間程度は下腹部に軽い痛みが続くことがありますが、鎮痛剤によっておおむねコントロールできます。
  • 頻度は低いですが、治療後数日から数ヵ月の間に感染が生じることがあります。ただし、抗生物質などの投与で対処できるケースがほとんどです。ごくまれに重症になった場合には、子宮全摘術などの外科的手術が必要になることがあります。
  • 塞栓によって壊死した筋腫が子宮口から自然に排出されることがあります。まれに自然に排出されず、改めて取り除く処置が必要になる場合があります。
  • 治療後、一次的に無月経になることがあります。
    45歳以上の方のなかでは、卵巣機能が停止する確率がそれ以前よりも高くなるという報告もあります。
  • 施術の際に使用するヨード造影剤の副作用として、軽い吐き気やかゆみが起こることがあります。まれに起こる重症例としては、ショックなどの報告があります。
  • 海外では、深部静脈血栓症、肺塞栓、アッシャーマン症候群(子宮内膜の癒着)、子宮壊死など重大な副作用の報告があります。
  • メリット

    • 局所麻酔で治療できる
    • 傷がほとんど残らない
    • 筋腫の個数、大きさによらず適用できる
    • 入院期間が短く、早期の社会復帰が可能
  • デメリット

    • 将来妊娠を希望する場合には適用できない
    • 再発や再治療の可能性がある
    • 組織検査を行なえないので、悪性腫瘍を完全には否定できない

UAEを行っている病院の検索方法

ミニコラム プラスCafé IVRによるさまざまな治療

IVR(アイ・ブイ・アール)という言葉をご存じですか。あまり聞きなれない言葉かと思いますが、近年、さまざまな医療現場で活躍している治療法です。
IVRは、「Interventional Radiology=インターベンショナルラジオロジー」の略語で、日本語では「画像下治療」といいます。
IVRは、画像下治療という名前のとおり、X線(レントゲン)やCT、MRIなどの画像診断装置で体の中の様子を確認しながら、カテーテルや針などの医療器具を使って、病気の原因のすぐ近くで治療を行います。
外科手術のようにからだにメスを入れることがないため、開腹する手術より入院期間が短くすみます。体内にカテーテルなどを入れる穴は数ミリなので、縫う必要がなく治療後に傷が残ることはほとんどありません。また全身麻酔ではなく局所麻酔で治療が行われることが多い治療法です。

子宮筋腫の治療にあるUAEもIVR治療の1つです。UAEは子宮動脈を塞栓し、筋腫への栄養経路を絶つことで筋腫の縮小を図りますが、同じ考え方の治療に「肝動脈塞栓術」があります。こちらは、肝動脈を塞栓することで肝臓にできたがんの縮小を図ります。がん治療の分野ではほかにも、カテーテルを利用して病巣へ直接抗がん薬を注入するなどの治療も試みられています。
また、脳梗塞や心筋梗塞などは血管内に粥腫(じゅくしゅ:コレステロールなどが溜まってできる腫瘤)が詰まることで発症しますが、IVRの技術を使って、この粥腫をとり除く治療が行われています。
将来的には、IVRを使った治療は、さらに広がっていくことと思われます。




※このコンテンツは産婦人科の先生にアドバイスをいただき作成しています。

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