子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 前編
  1. HOME>
  2. インタビュー>
  3. 子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 前編

子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 前編 | インタビュー


2019年10月公開
2021年11月更新

腹腔鏡を用いた子宮全摘術について教えてください。

良性の場合、全摘術は今後妊娠を希望しない人が対象となります。
悪性の子宮疾患は基本的に全摘が必要ですが、良性の子宮筋腫の手術では、子宮ごと切除する「子宮全摘術」と、子宮を残して子宮筋腫だけを切除する「子宮筋腫核出術」という2つの方法があり、どちらも腹腔鏡下で行えます。
腹腔鏡で行う子宮全摘術の適応に明確な決まりがあるわけではありませんが、大きな筋腫は腹腔鏡下手術の対象としていない施設もあり、医療機関ごとに独自の目安のもとに行われています。
当センターでは、独自の手技の工夫によって1キロ以上(最大7キロ)の巨大な筋腫の腹腔鏡下子宮全摘術を経験しています。

安藤 正明 先生

手術の際は、全身麻酔に加えて、硬膜外麻酔で局所の痛みのコントロールをします。硬膜外麻酔を使うと、術中の血圧コントロールにもプラスになり、術後の痛みも取ることができます。
当センターで腹腔鏡下子宮全摘術にかかる時間は、筋腫の大きさにもよりますが、通常は40~60分くらいです。手術翌日から歩いていただいて、入院期間は1週間です。

子宮全摘術を行うと、子宮筋腫核出術と異なり子宮筋腫の再発は起こりません。生理がなくなり、妊娠はできなくなります。卵巣は残るので、女性ホルモンの分泌には影響がないといわれています。

子宮全摘術は今後妊娠を希望しない人、核出術が向かない人が対象となります。

腹腔鏡を用いた子宮全摘術の術式について教えてください。

尿管損傷などが起こらないように注意しながら子宮全体を取り出します。
腹腔鏡下子宮全摘術には、全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)と腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術(LAVH)の2つの方法があります。前者は、切除から縫合まですべてを腹腔鏡下で行い、切除した子宮を腟から取り出す術式です。後者は、腹腔鏡下で子宮上部の靭帯の切断などを行い、子宮下部の付属器や靭帯の切断、子宮摘出、腟縫合は腟から行うもので、「腟式子宮全摘術(腟からの操作により子宮を全摘する方法)」に近い術式です。

当センターでは腹腔鏡下手術を始めたときから前者の術式、回収だけを腟から行い、それ以外のすべての手技を腹腔鏡下で行う全腹腔鏡下子宮全摘術で行っており、より高度な腹腔鏡技術が要求されています。最初はめずらしい手術法でしたが、最近ではトレーニングを積んだ施設で多く行われております。

手術では、おなかの穴に入れた鉗子で、子宮を支えている左右の靭帯と、子宮に血液を送っている子宮動脈および細かい血管を焼いて止血しながら切断し、子宮を外していきます。このとき、すぐ近くの腹膜の下に走行している尿管(腎臓から膀胱に尿を送る管)を、傷つけないように注意しながら、慎重に器具を操作して剥離していく必要があります。尿管の処理は婦人科の手術でもっとも気を遣うところで、トレーニングを積んでいかなくてはなりません。
こうして、子宮の両サイドおよび周辺の靭帯や血管を外した後で腟から切り離し、子宮を鉗子で把持して腟から取り出します。このとき、子宮が通常の大きさ(卵大)なら、スムーズに出てきますが、大きい場合は、腟側からはさみを使って子宮を削るか、小さくして回収します。子宮を取り出した後、腟の奥を縫合します。

後編では、腹腔鏡下子宮筋腫核出術、これからもっと広まっていくであろうロボット支援手術などについてうかがいます。

子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 後編>

バックナンバー

子宮全摘手術