インタビュー Vol.1

インタビュー 子宮筋腫を知る!

子宮筋腫の治療について専門医からお話をうかがいます。

Vol.1 子宮筋腫と診断されたら~治療のタイミングと治療選択

子宮筋腫と診断されたとき、治療が必要なのか、どんな治療法があるのか、自分にはどのような治療法がよいのか、悩む方も少なくないでしょう。
今回は、子宮筋腫と診断されたばかりで戸惑っている方が思い浮かぶであろう疑問を、大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学講座 教授・木村正先生に伺いました。

子宮筋腫とはどのような病気ですか?

子宮筋腫は、良性の腫瘍です。
子宮筋腫は、子宮の壁にできる良性の腫瘍です。ごく小さなものも含めると女性の2~3人に1人はもっているといわれるほど頻度の高い病気ですが、症状がなく一生気づかずに過ごす人も少なくありません。
子宮の壁は平滑筋といって、腸を動かしている筋肉と同じ種類の筋肉でできています。子宮筋腫は、その筋肉の細胞が増えていき、増えるうちに筋肉の性格が失われてしまった細胞とその細胞が作り出すコラーゲンがコブになったものです。悪性の腫瘍(子宮肉腫)とは異なり、子宮筋腫のコブは、周囲との境界がはっきりしていて、通常は周辺の臓器に食い込んだり、転移したりすることはなく、命をおびやかすことはまずありません。

治療が必要になるのは、どのような場合ですか?

つらい症状がなければ経過観察となります。
子宮筋腫と診断されると、「治療が必要なのか」「手術をしなくてはいけないのか」と悩む人が多いですね。しかし、原則、子宮筋腫は命にかかわる病気ではありません。特につらい症状がなければ治療の必要はなく、経過観察ということになります。
治療が必要なのは、子宮筋腫の症状を「つらい」と感じているときや、その症状で困っているとき(日常生活に支障があるとき)です。その場合でも、焦らずに治療法を検討する時間があります。
ただ、子宮筋腫の治療に年齢のリミットはありませんが、卵巣機能は年齢とともにだんだん低下していきます。子宮筋腫が不妊の原因となることもありますので、妊娠を希望している場合は、早めに医師とよく相談してください。

治療が必要となる症状にはどのようなものがありますか?

月経量が多い、月経期間が長い、頻尿、尿失禁などです。
子宮筋腫の代表的な症状には、①月経に関する症状(過多月経など)②子宮筋腫による圧迫症状(頻尿など)③子宮筋腫の大きさに伴う症状(重い、苦しいなど)があります。これらの症状がつらいとき、日常生活に支障をきたしているときには、治療を検討します。

①月経に関する症状

日本産科婦人科学会では、生理期間中の経血量が140ミリリットル以上の場合を過多月経と定義しています。しかし、実際にはいちいち量る人はいませんよね。アメリカの研究データでは、次のような状態を標準的な月経量、月経期間としていますから、自分の月経量や期間との比較の目安にするとよいでしょう。

標準的な月経量・月経期間
  • ナプキンあるいはタンポンが3時間以上もつ
  • 月経期間に使用する生理用品が21個以下である
  • 血のかたまりがあっても、約3センチ(親指大)以下である
  • 夜中に生理用品を交換する必要がない
  • 検査で鉄血乏性貧血を指摘されていない
  • 月経期間は8日以下である
UpToDateを参照

衛生観念が高い日本人とは、生理用品の使用量などは少し異なる点もあるかもしれませんが、毎月の月経量がこの範囲内なら正常と考えられ、治療の必要はないでしょう。
「1~2時間に1回、生理用品を交換する」「夜中も失敗がこわくて心配」「生理期間中に生理用品を2~3パックも買わないと足りない」というような場合は、月経量が多いと考えていいと思います。
月経量が多くて鉄欠乏性貧血になっている場合は、鉄剤を補給します。鉄剤によって貧血が改善され、ほかの症状がとくに気にならないならば、経過をみていけばよいでしょう。
なお、子宮筋腫の症状として生理痛をあげる人がいますが、生理痛は、大量の月経血を押し出すときに子宮が収縮することで生じる痛みです。子宮筋腫が原因で生理痛があるわけではありません。

②子宮筋腫による圧迫症状

子宮は狭い骨盤の中にあるので、筋腫が大きくなってくると他の臓器を圧迫することがあります。典型的な例は、膀胱が圧迫されることで尿が近くなること(頻尿)です。排尿回数が1日8回以上ある場合は頻尿といえます。また、階段を降りるときなどに膀胱が押され、女性の尿道は短いため、尿が漏れてしまうこと(尿失禁)もあります。逆に、筋腫が大きくなって尿道の下に回ると、尿が出にくくなる症状(尿閉)が起こります。
これらの症状で日常生活に支障が出ているときは、治療を検討します。
子宮筋腫があると便秘になるとよくいわれますが、便秘の原因が子宮筋腫以外という方も少なくありません。手術で筋腫を摘出、手術以外の治療で筋腫を縮小したにもかかわらず、便秘が改善されない場合は、改めて便秘の治療を検討してください。

③子宮筋腫の大きさに伴う症状

あおむけになっておなかを触ると、ゴロンとした硬いコブに触れることがあります。このコブが骨盤の中で非常に大きくなると、足の静脈から心臓にもどる血流を阻害し、足がむくんだり、静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」になることがあります。ごく稀なケースではありますが、このようなリスクが高くなると考えられる場合も治療が必要です。

子宮筋腫の治療法は変わってきているのでしょうか?

侵襲性の少ない治療が増えてきました。
子宮筋腫の治療というと手術で子宮を全摘すると思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、子宮筋腫の治療の選択肢はいくつもあり、ここ10~20年で、患者さんの体に負担をかけない低侵襲な治療法が増えてきました。
たとえば、手術をするとしても、以前はおなかを切る開腹手術が多かったのですが、最近では、可能なものは腹腔鏡手術(おなかにいくつか穴を開け、カメラや器具を入れてモニターを見ながら手術する方法)や腟式手術(腟から手術器具を入れて手術する方法)が広く行われています。開腹手術より、おなかの傷が小さくてすみます。
また、子宮を残したいという方には、子宮筋腫核出術(子宮筋腫だけを取り除く手術)が行われるようになっています。

ただし、開腹手術ではなく腹腔鏡手術をすれば侵襲が少ないかというと、必ずしもそうとはいえません。大きい筋腫を6~7時間もの長時間かけて腹腔鏡手術で取り除くのは、逆に患者さんの負担が増すことになります。また、筋腫核出術では、全摘手術より出血のリスクが高くなります。

手術以外の方法で子宮筋腫を治療することはできますか。

子宮動脈塞栓術(UAE)が保険診療でできるようになりました。
子宮の温存を希望し、手術も望まない方には、子宮動脈塞栓術(UAE)という方法があります。UAEは、足のつけ根の血管から細い管を入れて子宮動脈に塞栓物質を送り込み、子宮筋腫に行く血流を止めて子宮筋腫を壊死させる方法です。栄養を断たれた子宮筋腫はだんだんと小さくなり、それにしたがって症状も改善していきます。
UAEが最初に報告されたのは1990年代です。欧米を中心に普及し始めてから20年以上が経ちました。日本では2014年に、一定の条件を満たす施設では保険診療で治療を受けられるようになりました。
UAEはおなかに傷が残りません。足のつけ根に針を刺すだけですから傷が小さく、子宮を残せるという安心感もあるでしょう。この治療法を選択した患者さんの満足度は非常に高いというレポートが出ています。
ただ、治療後に妊娠を希望する方・妊娠の可能性を残したい方は、妊娠した時のトラブルが多いことが知られており、受けるべきではありません。妊娠は望まないけれども子宮は温存したい、手術は避けたい、入院期間や療養期間を短くして早く社会復帰したい、と希望している方に向く選択肢だと思います。

子宮筋腫の治療に対する患者さんの意識も変わってきたようですね。

年齢にかかわらず子宮の温存を希望する方が増えています。
昔は20代で結婚して妊娠・出産することが普通でしたが、最近では、30代以降の結婚が増え、40歳以降に妊娠を考える方もいます。そのため、40歳以上の方でも子宮を温存したいと希望することが多くなりました。また、子どもは希望しないけれども、子宮は残したいという方も少なくありません。昔は、40歳を過ぎたら子宮を取ることを勧める医師が多かったのですが、現在では患者さんのご意思、希望に沿うようにしています。しかし、ご希望にかかわらず医学的に正しい、とされることもあります。例えば子供のことを考えて子宮を温存されるのであれば、筋腫核出術(手術による子宮温存)が一番良い方法です。

患者さんは希望を医師に伝えておくことは大切です。ただし、先に述べたように子宮筋腫の大きさや場所、手術中の出血量の問題や、治療後の子宮の状態など、さまざまな条件によって、希望通りの治療ができないこともあります。

治療法を決めるときに重要なことは何でしょうか?

どんな治療にもリスクがあることを知っておきましょう。
子宮筋腫の治療法は進歩して選択肢も多くなり、安全性も高くなっています。ただし、どんな治療にも、わずかではあってもリスクがあることを知っておいていただきたいです。
たとえば、子宮筋腫核出術では子宮全摘手術に比べて出血量が多くなるリスクがあります。子宮全摘手術は、子宮につながる動脈を全部止めて切除をするので、出血量のコントロールがしやすいのですが、子宮筋腫核出術では子宮動脈の血管を止めないため出血量が多くなることがあります。当院では、過去10年間にそのような経験はありませんが、術中に大量出血した場合は、子宮全摘手術に切り替えなければならないこともあります。
一方、子宮全摘手術では、子宮の周りにある尿管や膀胱を傷つけるリスクがあります。

また、UAEでは、まれに、壊死した子宮筋腫に感染が生じることがあります。通常は、抗生物質などの投与で対処できますが、ごくまれに、抗生物質(抗菌薬)が効かずに敗血症を招き、命に関わることになることもあります。感染が重症化したケースでは、手術で子宮を摘出することになります。

もちろん、私たち医師は、細心の注意をはらってリスクを最小限にするための努力をし、リスクを上回るメリットをもたらすために治療をしています。どんな治療を受けるのであっても、患者さんはリスクについて医師に確認しておきましょう。治療法の選択にあたっては、どのリスクをもっとも避けたいかを加味して選ぶとよいでしょう。

これから治療を検討する患者さんへアドバイスをお願いします。

まず、何が一番つらいのかを医師に伝えていただくことが大切です。
診察のときに、「子宮筋腫がつらいんです」とおっしゃる方が多いのですが、具体的にどんな症状がつらいか、何に困っているかを教えていただきたいのです。医師は、それが子宮筋腫によって起こっている症状なのか、筋腫と関係なく起こる症状なのかを判断します。子宮筋腫の治療をしてもご自身がつらいと思っておられる症状に変化がなければ意味がないので、その点は重要なポイントになります。
また、治療に関して疑問点があったら、医師に聞き、よくコミュニケーションをとってください。ただし、診察時間には限りがありますので、手際よく質問できるように事前にメモなどにまとめてきてもらえるといいですね。

最初にお話した通り、原則として、子宮筋腫は命にかかわる病気ではありません。したがって、子宮筋腫と診断されても慌てることはありません。つらい症状がなければ経過観察を選択し、治療が必要な場合もいくつかある治療法の中から、医師と相談の上、よりよい治療法を選択してください。