子宮筋腫と診断されたら~治療のタイミングと治療選択
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子宮筋腫と診断されたら~治療のタイミングと治療選択 | インタビュー


2018年10月公開
2021年11月更新

子宮筋腫の治療について専門医からお話をうかがいます。

2018年10⽉公開

子宮筋腫と診断されたら

~治療のタイミングと治療選択

大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学講座 教授

木村 正 先生

子宮筋腫と診断されたとき、治療が必要なのか、どんな治療法があるのか、自分にはどのような治療法がよいのか、悩む方も少なくないでしょう。
今回は、子宮筋腫と診断されたばかりで戸惑っている方が思い浮かぶであろう疑問を、大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学講座 教授・木村正先生に伺いました。

子宮筋腫とはどのような病気ですか?

子宮筋腫は、良性の腫瘍です。
子宮筋腫は、子宮の壁にできる良性の腫瘍です。ごく小さなものも含めると女性の2~3人に1人はもっているといわれるほど頻度の高い病気ですが、症状がなく一生気づかずに過ごす人も少なくありません。
子宮の壁は平滑筋といって、腸を動かしている筋肉と同じ種類の筋肉でできています。子宮筋腫は、その筋肉の細胞が増えていき、増えるうちに筋肉の性格が失われてしまった細胞とその細胞が作り出すコラーゲンがコブになったものです。悪性の腫瘍(子宮肉腫)とは異なり、子宮筋腫のコブは、周囲との境界がはっきりしていて、通常は周辺の臓器に食い込んだり、転移したりすることはなく、命をおびやかすことはまずありません。

治療が必要になるのは、どのような場合ですか?

つらい症状がなければ経過観察となります。
子宮筋腫と診断されると、「治療が必要なのか」「手術をしなくてはいけないのか」と悩む人が多いですね。しかし、原則、子宮筋腫は命にかかわる病気ではありません。特につらい症状がなければ治療の必要はなく、経過観察ということになります。
治療が必要なのは、子宮筋腫の症状を「つらい」と感じているときや、その症状で困っているとき(日常生活に支障があるとき)です。その場合でも、焦らずに治療法を検討する時間があります。
ただ、子宮筋腫の治療に年齢のリミットはありませんが、卵巣機能は年齢とともにだんだん低下していきます。子宮筋腫が不妊の原因となることもありますので、妊娠を希望している場合は、早めに医師とよく相談してください。

治療が必要となる症状にはどのようなものがありますか?

月経量が多い、月経期間が長い、頻尿、尿失禁などです。
子宮筋腫の代表的な症状には、①月経に関する症状(過多月経など)②子宮筋腫による圧迫症状(頻尿など)③子宮筋腫の大きさに伴う症状(重い、苦しいなど)があります。これらの症状がつらいとき、日常生活に支障をきたしているときには、治療を検討します。

①月経に関する症状

日本産科婦人科学会では、生理期間中の経血量が140ミリリットル以上の場合を過多月経と定義しています。しかし、実際にはいちいち量る人はいませんよね。アメリカの疾患に関するデータベース(UpToDate®)では、次のような状態を過多月経、過長月経としていますから、自分の月経量や期間との比較の目安にするとよいでしょう。

過多月経・過長月経の目安
  • 生理の最も多い日には、1~3時間おきにナプキンやタンポンを交換する必要がある
  • 出血が7日間以上続く
  • 出血量が多く、ナプキンとタンポンを同時に使用する必要がある
  • 夜間にナプキンやタンポンを交換する必要がある
  • 月経に1インチ(約2.5cm)以上の血の塊が混じる
  • 鉄欠乏性貧血である

衛生観念が高い日本人とは、生理用品の使用量などは少し異なる点もあるかもしれませんが、毎月の月経で上に挙げたような症状が一つもなければ月経の量については正常と考えられ、月経量についての治療は必要ないでしょう。
「1~2時間に1回、生理用品を交換する」「夜中も失敗がこわくて心配」「生理期間中に生理用品を2~3パックも買わないと足りない」というような場合は、月経量が多いと考えていいと思います。
月経量が多くて鉄欠乏性貧血になっている場合は、鉄剤を補給します。鉄剤によって貧血が改善され、ほかの症状がとくに気にならないならば、経過をみていけばよいでしょう。
なお、子宮筋腫の症状として生理痛をあげる人がいますが、生理痛は、大量の月経血を押し出すときに子宮が収縮することで生じる痛みです。子宮筋腫が原因で生理痛があるわけではありません。

②子宮筋腫による圧迫症状

子宮は狭い骨盤の中にあるので、筋腫が大きくなってくると他の臓器を圧迫することがあります。典型的な例は、膀胱が圧迫されることで尿が近くなること(頻尿)です。排尿回数が1日8回以上ある場合は頻尿といえます。また、階段を降りるときなどに膀胱が押され、女性の尿道は短いため、尿が漏れてしまうこと(尿失禁)もあります。逆に、筋腫が大きくなって尿道の下に回ると、尿が出にくくなる症状(尿閉)が起こります。
これらの症状で日常生活に支障が出ているときは、治療を検討します。
子宮筋腫があると便秘になるとよくいわれますが、便秘の原因が子宮筋腫以外という方も少なくありません。手術で筋腫を摘出、手術以外の治療で筋腫を縮小したにもかかわらず、便秘が改善されない場合は、改めて便秘の治療を検討してください。

③子宮筋腫の大きさに伴う症状

あおむけになっておなかを触ると、ゴロンとした硬いコブに触れることがあります。このコブが骨盤の中で非常に大きくなると、足の静脈から心臓にもどる血流を阻害し、足がむくんだり、静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」になることがあります。ごく稀なケースではありますが、このようなリスクが高くなると考えられる場合も治療が必要です。

子宮筋腫の治療法の変化について>

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