子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 後編

子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 後編 | インタビュー

腹腔鏡下子宮筋腫核出術の術式について教えてください。

腹腔鏡下手術では、縫合と回収がとても難しい操作となります。

腹腔鏡下子宮筋腫核出術

子宮筋腫核出術では、筋腫を抜き取り、抜き取った部分を縫合するという操作を細い鉗子の先端を動かしながら、いろいろな角度で繰り返し行わなければなりません。そのため、筋腫が大きく数が多いほど、手術に時間がかかりますし、それに伴い出血量も多くなります。体腔内で縫合を行い、糸を結ぶという操作自体が難しいので、かなり難易度の高い手術といえます。
当センターでは、核出した子宮筋腫は腟の一番奥の後壁を一部切開して、筋腫に糸をかけてそこから体の外に取り出します。10センチもある大きい筋腫はそのままでは回収が困難なため、切れめを入れ変形させてから回収します。

このように、腹腔鏡下子宮筋腫核出術は、開腹手術と異なり、限られた術野と狭い空間の中で筋腫の核出、縫合、回収、すべてを行わなければならず、術者にとっては三重苦ともいえます。術者の技術にもよりますが、子宮筋腫の大きさは8センチ以上、5個以上となるとかなり困難です。
MRIの画像で確認できた筋腫が5個でも、実際に手術を行ってみると、画像には映っていない小さい筋腫が多数あり、予想の倍くらいあるケースがしばしばあり、これが再発の元となります。

腹腔鏡下子宮筋腫核出術では、輸血することはありますか?

術前に自己血を保存する施設もあります。
腹腔鏡下子宮筋腫核出術では、腹腔鏡下全摘術に比べて出血が多いとはいっても、子宮筋腫の数や大きさ、その人の血流によってもまったく違います。ほとんど出血しない人もいれば、300ccや500cc出血する人もいます。体腔内での縫合のスピードにも関係します。当センターでは、輸血が必要となったことはありませんが、医療機関によっては、自己血を貯血して輸血に備えるところもあります。

子宮筋腫が大きい場合、事前に薬物療法で縮小させることはありますか?

多発している筋腫の場合、小さな筋腫はさらに小さくなり見逃すこともあります。
GnRHアゴニストなどを事前に投与して、子宮筋腫を小さくしてから手術を行う医療機関もあります。当センターでも、特別大きな子宮筋腫に対しては行うこともありますが、あまり多くはありません。子宮筋腫が多発している場合に薬物療法で縮小させると、小さな筋腫はさらに小さくなり、手術時に見つけられなくなるため再発率が高まるという報告もあり、ケースバイケースになると思います。

安藤 正明 先生

多発性筋腫の場合、子宮筋腫核出術を何回かに分けて行うことはありますか?

基本は1回で、できるかぎり核出します
子宮筋腫の数が多い場合や、切除しにくい位置にある場合でも、2回に分けて手術を行うということはまずありません。1回の手術で、症状に影響していると考えられる大きな筋腫から優先的に、取れるものは全部取っておくのが基本です。良性の疾患である子宮筋腫の手術を、2回も全身麻酔をかけて行うのは患者さんにとっても受け入れにくいと思います。

もう1つ、子宮筋腫が多数あった場合に、いくつでも切って取ればいいかどうかという問題もあります。子宮は軟らかい筋肉ですが、切った後でいくらきれいに縫合しても、線維化した瘢痕(はんこん)が残ります。その部分は硬くなり伸縮しません。そのため、手術後に妊娠して子宮がどんどん大きくなった場合、子宮破裂を起こす危険性が出てきます。子宮破裂の頻度は非常に少ないのですが、万一起こると胎児の救命が難しく、母体も命の危険にさらされます。子宮の傷が多くなればなるほど子宮破裂のリスクは高まると考えられますから、筋腫が多い場合はたくさん取ればいい、とは言い切れないわけです。ですから、特に症状に関係ない小さな筋腫は取らないという選択もあり得ます。

再発した場合、再び腹腔鏡下で手術をするのは可能ですか?

可能ですが、手術の難易度は高くなります
子宮筋腫核出術では、筋腫が小さすぎて取りきれない場合もありますし、小さな芽のようなものまでは核出できないので、何年か後に再発することはしばしばあります。1個だけでも再発率は20%といわれています。特に、10個以上の多発性の筋腫は再発しやすいと考えられます。再発の時期については、筋腫の大きくなるスピードが違うため、2年後に再発してしまう人もいれば、多発性の筋腫でも閉経までまったく大きくならないケースもあり、一概にはいえません。

再発した場合には、その時点でまた治療を検討します。再度、腹腔鏡下手術で子宮筋腫核出術、または子宮全摘術を受けることも可能です。ただ、1度手術をしている場合は、腹腔鏡では少ないとはいえ癒着が起こることがあり、筋腫を取った跡に腸が癒着しているような場合は、腸を剥離した後、腸の穿孔による腹膜炎を起こすリスクもあり、手術の難易度はさらに高くなります。最近では手術時に癒着防止剤などで癒着を予防することが増えてきました。

なお、閉経が近づいている年齢の患者さんの場合は、閉経後は筋腫が大きくなることもないので、経過観察をすることもありますし、また出血などの症状が強いが手術を受けたくないという方には、UAE(子宮動脈塞栓術)など、手術以外の治療法を検討することもあります。

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2019年11月公開
2020年1月更新