子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 後編
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子宮筋腫の腹腔鏡下手術~その利点と難点 後編 | インタビュー


2019年11月公開
2021年11月更新

手術後の注意点を教えてください。

シャワーは当日からOKです。性生活は3ヵ月以上たってからに。
全摘術、核出術にかかわらず、腹腔鏡で手術をされた場合、おなかに注入した炭酸ガスが貯留するため、術後2、3日は肩のあたりが痛いことがありますが、それも自然に消えていきます。炭酸ガスは、1週間以内に吸収されるのが普通です。

また、術後に発熱することがありますが、2、3日で熱が下がれば心配はいりません。通常、術後数日目に炎症反応などをチェックして、感染の有無を調べます。ただし、長期間高熱が続く場合は、感染の心配があります。

また、皆さんは、手術の後は入浴禁止と思われているようですが、じつは手術当日に入浴してもいいのです。傷の痛みや感染の心配な方は、シャワーを浴び、石けんで傷口を十分に洗っていただければよいでしょう
腹腔鏡下で手術した場合、特に全摘のケースに多いのですが、性生活をあまり早くに再開するとそれがきっかけとなって、腟を縫合したところが開いてしまうことがあります。頻度は子宮全摘術で0.4パーセントくらいと、それほど高くはないのですが、開腹手術や腟式手術に比べて、腹腔鏡手術やロボット支援手術(後述)では多いといわれています。筋腫核出術ではさらに頻度が少なくなります。
傷口は、くっつくのに3ヵ月ぐらい、完全にかたまるまでに6ヵ月程度かかるので、性生活はできれば6ヵ月以降、難しければ3ヵ月以降に再開していただくのが理想的です。万一傷口が開いてしまった場合は、腟から再縫合ということになります。

近年では、ロボット支援手術による子宮全摘術も行われていますね。

子宮筋腫の子宮全摘術、初期の子宮体がんで保険適用になっています。
ロボット支援手術は、3Dの拡大画像を見ながら、患者さんから離れたコンソールで操作すると、ロボットのアームが動き、術者からは離れた位置にいる患者さんの手術ができる手術です。繊細な動きが可能で日本でもいろいろな手術に用いられ、婦人科では、子宮筋腫の子宮全摘術、初期の子宮体がんで保険適用になっています。
ロボット支援手術では、ロボットのアームの動きが人間の関節よりも自由に動ける点や、体の中の映像が拡大して映し出されるため細かい作業がしやすい点などがメリットです。ただ、腹腔鏡下手術とはまた違った難しさがあります。

また、ロボットの機械自体が高額で、莫大な設備投資と維持費がかかります。ですから、ロボット支援手術をする医療機関も限られます。

ロボット支援手術は、航空機のパイロットのトレーニングと同様に、3Dで実際の手術と同様の手技をシミュレーションすることができるので、医師の技術向上のためには理想的です。

ライト兄弟が飛行機を開発してから100年ちょっと、現在の飛行機の性能はけた違いに進歩しました。最初やっと40メートル飛んだものが航空工学の発展で、いまや宇宙へと行くという時代です。人間はいくら努力しても機械の力を借りないと100メートル時速40キロ以上では走れません。人間本来の能力には限界もあるのです。ロボット支援手術は人間が機械の力を使って進化していくという可能性を含む、将来性に富んだ手術といえるでしょう。当センターでも、年間300例を目標に続けていく予定です。

子宮筋腫の治療の選択について、患者さんにアドバイスをお願いします。

手術以外の方法も考慮して、適切な治療を受けてください。
近年では、手術にしても開腹手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援手術などがあり、また、手術以外の治療法にもいろいろな選択肢があります。治療を選ぶ際には、年齢、妊娠を希望するかどうか、それぞれの社会的背景や、筋腫の大きさや数などを総合的に判断して、いろいろな治療法のメリット、デメリットを考えながら選択することが大切です。
腹腔鏡下手術を希望する方は、手術の症例数が多く、トレーニングを重ねた医師が手術を担当している医療機関を選ぶことをお勧めします。

また、手術以外の治療法が選択できないのかも検討しましょう。「45歳で子宮筋腫が30個ほどある、妊娠は望まないが子宮を残したい」という場合は、保存的治療法のUAE(子宮動脈塞栓術)も選択肢の1つになるでしょう。UAEの場合、子宮筋腫を取り出しませんので、病理検査ができません。急に大きくなってきた筋腫など、悪性の可能性があるものは避けたほうがよいでしょう。
担当の医師とよく相談して、適切な治療法を選択してください。

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