子宮筋腫の子宮動脈塞栓術(UAE)~治療の実際と対象となる患者さん(前)
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UAE治療を受ける前にどのような検査をするのですか。


2020年5月公開
2021年11月更新

UAE治療を受ける前にどのような検査をするのですか。

婦人科で悪性腫瘍や感染症の有無をチェックした上で、MRIでも確認します。

当院の場合は、まず婦人科を受診してもらうことになります。婦人科では内診や細胞診などで子宮頸がんや子宮体がんなどの悪性腫瘍、クラミジアなどの感染症、妊娠の可能性などを十分にチェックし、UAEの適応となるかを判断します。次に放射線科外来でUAEの説明と、MRIを用いて骨盤内の状態と血管の走行の様子を調べます。

術前カンファレンスやUAEの施術前に、このMRI画像を見直し、この血管は大丈夫、ここは気をつけたほうがよいというチェックを繰り返し、治療戦略をたてることが大切です。


MRI

UAEでは具体的にどのように治療が進められるのでしょうか。

足のつけ根に小さな穴を開けて、カテーテルを挿入します。

カテーテルを挿入

UAE治療はカテーテルを使った血管系IVRです。施術台に仰向けに寝て、足のつけ根にある大腿動脈という動脈の周辺に局所麻酔をして、カテーテルを大腿動脈に入れるために5ミリ程度切開します。全身麻酔は行いません。そこから入れるカテーテルは、直径1.5ミリ程度のカテーテル(親カテーテルとも呼ばれています)と、その中を通す直径0.7ミリ程度のマイクロカテーテルをセットで使います。

親カテーテルを入れたら、その中にマイクロカテーテルを挿入して、子宮動脈を目指して進めていきます。カテーテルが子宮動脈に向かっていく様子は、X線透視下で観察していますが、熟練したIVR専門医であればそれほど困難ではありません。そこからターゲットとなる子宮動脈までマイクロカテーテルが届いたら、慎重に塞栓物質を注入していきます。筋腫の体積が大きい場合は塞栓物質を入れるのに多少の時間がかかりますが、施術自体は平均して1時間程度で、早ければ30分程度で終わることもあります。また、筋腫が1つの場合でも複数個ある場合でも、同じように1回の施術で治療が可能です。

施術中、子宮動脈を塞栓するときに痛みが生じることがあるため、しっかりと痛みのコントロールをしつつ全身管理をすることが大変重要です。塞栓時の痛みは筋腫の大きさとは関係なく、ひどい生理痛のような痛みを感じる患者さんもいれば、まったく痛みを感じなかったという患者さんもいます。

注入される塞栓物質は、どのようなものですか?

マイクロスフィアという塞栓物質は2014年から保険適応となりました。

UAEで使用するのは0.5~1ミリ程度のマイクロスフィアという粒子状塞栓物質で、日本では2014年からマイクロスフィアによるUAEが保険適用となっています。マイクロスフィアはビーズのような球状の非吸収性の粒状物質です。

マイクロスフィアを注入する際には、小さい粒子が目的としない血管に行かないように、また筋腫への血流が再開しないように、詰めすぎないようにと細心の注意をしながら行います。そのように治療を行うことで、後日MRIで撮影すると、筋腫の部分だけ血流がなくなっており、正常な子宮筋層には血流が保たれているのが確認できます。

UAEの治療後の流れについて>

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