子宮筋腫の子宮動脈塞栓術(UAE)~治療の実際と対象となる患者さん(前)
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治療後の流れについても教えてください。


2020年5月公開
2021年11月更新

治療後の流れについても教えてください。

10分ほど止血した後、2、3時間は安静にしていただきますが、翌日には入浴できます。

小金丸雅道先生


カテーテルを抜くときにすこし出血しますので、10分程度押さえて止血します。同時に、患者さんには子宮内感染予防のための抗生剤の点滴を行い、痛みがある場合は痛み止めの薬を投与しながら経過をみていきます。また、脱水しないように点滴も行います。

カテーテルを入れるため切開した部分から再出血しないように、ガーゼとテープで押さえ固定しますが、2、3時間程度で外すことができます。そこからは普通に歩いて大丈夫です。むしろ深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群を予防するために、できるだけ積極的に歩いてもらうよう指導しています。翌日にはカテーテルを入れたところの小さな傷もくっついていますから、入浴も可能です。切開した部分はほとんど目立たないほど小さな傷です。

UAE後には強い生理痛のような痛みが生じることがあるため、鎮痛剤を点滴注射します。痛みの強さや持続期間は人それぞれですが、当院では強い痛みは1日程度でなくなることが多く、月曜日に入院して、火曜日に施術をしたら、木曜日の朝には鎮痛剤の点滴は必要なくなっています。

痛みがなくなるか経口の鎮痛剤で抑えられていて、食事が普通に摂れて、検査値も異常がなければ退院できますので、早い人で木曜日、通常は金曜日に退院となり、入院期間は5日くらいです。元気な人では次の週から仕事をされています。

治療後、筋腫や症状はどうなりますか?

筋腫は1年ぐらいかけて縮小しますが、過多月経などの症状は比較的早く改善します。

塞栓物質を注入して子宮動脈を詰まらせると、直後に細胞は死んでしまいます。筋腫への血流がなくなったことで、月経時の出血量が減ったりお腹が張っている感じがなくなったりと、症状の改善は比較的早くにみられます。筋腫が小さくなっていくのには、半年から1年くらい時間がかかり、最終的には、子宮筋腫の体積が治療前の50パーセント程度まで縮小することもあります。一方、一部には症状が改善せず再治療が必要になる方もいらっしゃいます。

症状の改善例としては、仰向けになりお腹を触るとボコボコと触れていたものが柔らかくなった、月経時の出血量が減り鉄剤を服用しなくてよくなった、などの意見を患者さんから聞きます。骨盤内の大きな筋腫が縮小することで頻尿や便秘の症状が緩和されることがありますが、患者さんのなかには治療するまで、自分が頻尿や便秘であることに気づいていなかったという方が少なくありません。頻繁にトイレに行くことが普通で症状として意識していなかったようですが、治療によりそれらの症状が緩和されて初めて気づいたそうです。

これががんの治療であればがん細胞を完全に消滅させることを目指しますが、UAEの場合は子宮筋腫により生じる症状を緩和または消失させることを目指して治療します。

子宮筋腫のUAE治療のメリット・デメリットなど(後編)>

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